2025年5月31日、名作ミュージカル『エリザベート』が豪華キャストとともにブダペスト・アリーナに帰ってきた。オリジナルキャストのヤンザ・カタ（エリザベート役）、サボー・P・シルヴェステル（死＝トート役）らが一堂に会し、ファン待望の一夜限りのスペクタクルが実現した。

ソリスト、アンサンブル、合唱、オーケストラ、ダンスを含む、時代考証に基づいた豪華衣装と共に、緻密に計算された演出や小道具、振付が施された。2幕構成による全曲演奏形式の本公演は、コンサート形式を超えた総合芸術としてアリーナの大空間に広がった。

エリザベートは脚本・作詞ミヒャエル・クンツェ、作曲シルヴェスター・リーヴァイの名コンビによるウィーン発のミュージカルである。波乱に満ちたエリザベート皇后の人生と、“死（トート）”との運命の出会いを描いた物語は世界中で高い評価を受け、1996年のハンガリー初演以来、根強いファン層を築いてきた。様々な人間模様が織りなす普遍的なドラマとして、観客の心を捉え続けている。

芸術監督ヤンザ・カタ、演出サボー・P・シルヴェステル、音楽監督マクラリー・ラースローを中心に、主催のKaposMusicalとJanza Kata Teamが一丸となって創り上げたこの舞台は、ハンガリー独立系ミュージカルの最高峰といえる。衣装制作を担当したSZASENKA®とツェードリ・モニカによる豪華で細部へのこだわりも光る。

ヤンザ・カタは16歳から61歳までのエリザベートを見事に演じ分け、美しく繊細で情熱的な歌唱力と共に舞台の光そのものとなった。サボー・P・シルヴェステルによる死の存在は、舞台の空気を変えてしまうほどの存在感。伸びのある魅力的な声は深みを伴い、魂を揺さぶる。

ルドルフを演じたドルハイ・アティッラの危機と苦悩に満ちた美しい歌唱表現力はさらに磨きがかけられ、人生そのものの重みが映し出される。ルイジ・ルッキーニ役のフェルデシュ・タマーシュの自然体ながらも圧倒的な存在感と歌唱力には脱帽。皇帝フェレンツ役のバーリント・アーダムの見事なまでの歌唱力と演技力、10歳のルドルフを演じたホルバート・ジョンボルの美しく澄んだ歌声や、大舞台での堂々とした演技、モルナール・ピロシュカの「音楽はすべてを超える」というメッセージを体現した魂のステージは、観客すべての心を打った。

この高い完成度の舞台を実現するために費やされた時間と労力は計り知れない。世界水準の音響および照明技術のクオリティを誇る主催のKaposMusicalの卓越した舞台芸術は、今ハンガリーで最も成功している独立系ミュージカルプロダクションの一つとして知られている。芸術監督兼プロデューサーのヤンザ・カタ、舞台監督兼プロデューサーのサボー・P・シルヴェステルらは、メインキャストを務めながら、舞台全体の総指揮も担い、その労力とエネルギーは想像を超えるものだった。

終演後、ヤンザ・カタの感謝の言葉に応えるようにアリーナの観客は総立ちとなり、長く温かな拍手が会場を包み込んだ。その場に漂う感動、驚き、懐かしさ、そして高揚感は、演奏者と聴衆、すべての人々をひとつに結びつける奇跡の瞬間だった。

ハンガリー・ミュージカルの底力を示したこの現在進行形の舞台が、近い将来、日本や海外の舞台で披露されることを強く期待したい。

『エリザベート2025』『ミュージカル・ガラ・コンサート』などの公演依頼やお問い合わせは主催のKaposMusicalまで（https://www.kaposmusical.hu/）
日本語での窓口は contact@jmpo.hu までお気軽にご連絡ください。

2025.06

観客総立ち！ハンガリー版『エリザベート2025』─ブダペスト・アリーナに蘇った伝説のミュージカル！